赤い空の原因と結果  奇想天外な、終末思想。

 いつの日からか空から青が消えた。
 学者達はいろいろな説を唱え、毎日テレビや新聞で過熱報道が繰り返される。

 どうしてそうなったかを考えるより先に、これからどうすればいいのかを考えればいいのに――伊織はそんなことを考えた。

 政府から物凄い額の懸賞金が出されて、伊織の彼氏もそれにのった。
 昔から夢ばかり追い続け、地に足のつかない生活を送っている彼の考える案は、子供の読む絵本並みだった。

「海が赤いから空も赤いんじゃない? だから、海に青いインクを流せばいいんだよ」
 海は空の色を映し、いつでも茜色に染まっていた。
「問題は必要となる大量のインクをどこから調達してくるかだな……」
 彼は真面目に考えているらしい。

 伊織はそんな彼を止める方法を考えていた。
 地球の危機だろうが、一生遊んで暮らせるだけのお金とか、そんなものはどうでもよかった。


 でも、あれこれと考えている彼は楽しそうだった。
 こういうときでも夢みたいなことばかり言っている彼が、伊織は憎めなかった。
 いや、むしろ。


 この人と最後まで一緒にいられて嬉しいのかもしれない――伊織はふと、そんなことを思った。


(了)